【作曲理論】カデンツ(ケーデンス)を知る。【コード進行基礎】

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コード進行はフリーダムではなくリバティである。

「コード進行は自由だ。」この自由の解釈が「liberty」か「Freedom」の違いで、作曲家としての精神が大きく異なるようになります。

私は「liberty」派です。前にも触れましたが今日ほぼすべての音楽の礎になっている音律「十二平均律」は数学的に算出された理論に基づき、転調を行えるよう工夫された万能型の音律です。

故に、今日の多くのジャンルの音楽は少なからず理論的な音楽であるといえます。コード進行にも実はもっとも基礎的な雛形と呼べるものが存在しているのをご存知でしょうか?

それが今回のテーマにあります。「カデンツ(ケーデンス)」と呼ばれるものになります。では見ていきましょう。

この記事を理解するには、楽典から「音程(インターバル)」「固有和音(ダイアトニックコード)」「調(キー)」「音階(スケール」「和音機能」の知識が必要になります。

基本3型

カデンツの基本形はたった3種類しかありません。すべての進行はこの進行からの派生だと解釈することが出来ます。

このカデンツの性質を理解しコードワークの流れを判別すれば、楽曲分析(アナリーゼ)にも役立ちますし、「この曲は何キー?」という判断も容易につきやすくなります。

なを、以下の説明では、トニック(トニカ)を「T」、サブドミナントを「SD」、ドミナントを「D」と表記します。

また、分かりやすい用にキーはすべてC:で統一していきます。

「T>D>T」型

基本中の基本で、ほぼすべての人がこの進行に聞き覚えがあると思われます。

◆T>D>T(C:C>G>C)基本◆


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”お辞儀”ですよね。この進行は機能和声上では「ドミナントが解決する。」「ドミナントモーション」という状態を端的に表した基本形です。

◆T>D>T(C:C△7>AM7>G7>Em7)応用◆
ではこのカデンツを応用して考えた例です。聞いて見ましょう。


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はい。これもTDT型といえます。

Tに属する、ⅠとⅥを続けた後にDに行き、今回はⅢをT扱いで登場させてみました。

このようにこのたった一つの型でも複数の組み合わせを考えることができます。

「T>SD>T」型

はい。今度はDの変わりにSDを使って解決するタイプです。これも基本の型です。

特徴としてDが登場しないため、強い進行力をもちません。ですので強い変化がつきにくい構造を作りやすいという特性があります。

ジャンルによってはⅡm>Ⅰへの進行など一部を敬遠する場合があったりします。響きの選定には注意が必要な形でもあります。

そこも踏まえてみていきましょう。

◆T>SD>T(C:C>F>C)基本◆


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こちらが基本形といえる型ですね。

主音が保留音になるため非常に安定して聞こえると思います。特に今回はトップノートが主音ですので余計に安定して聞こえてくると思います。

ここで重要なのが、この型の場合同じSDのⅡmを使うと保留音が存在しないという問題が起きます。これはクラシック系の自然な音の流れを意識する場合は基準外になります。

ですがロックなどのジャンルでは経過的に用いられる場合もありますのでジャンルにより響きを厳選するとよいとおもいます。

◆T>SD>T(C:C>Am7>F>Dm7>C△7)応用◆


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はい、こちらが私がちょっと好きな変則コードワークの一つです。

ポイントはⅡm7>Ⅰ△7へと向かう基準外進行、しかも保留音である主音を無視するというのが特徴です。

これにより唐突に終止を迎える印象が得られ、かつ最後のⅠ△7がやけにお洒落に聞こえませんか?

お決まりの終止に飽きてきたときなどにはオススメです。

「T>SD>D>T」型

最後は、上記二つを組み合わせたような型になります。この型は非常に多くのジャンルで多用されます。

和音機能3種すべてが登場するため、非常に多くの表現が可能であり、またこの進行を変形/変則化することで様々なジャンルに見られる特色を出すことも出来るようになります。

◆T>SD>D>T(C:C△7>F△7>Dm7>G7>C)基本◆


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はいこんなカンジが基本です。

SD>Dの流れはより音楽的に進行を滑らかにします。Ⅱ-Ⅴ7なんてよく言われますがこれも分解すれば「SD>D」の流れになります。

他にもⅥをつかったり、Ⅲmを使ったり、SDはⅣしか、Ⅱしか使わないなどの限定もできますよね。それだけでもかなりのバリエーションになります。では応用でやってみましょう。

◆T>SD>D>T(C:Am7>F△7>Em7>G7onD>C)応用◆


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Ⅵからはじまる切ない響きにしてみました。

この進行はベースラインが下降するよう、またベースラインが属音>主音と言う流れにさせないように工夫した進行です。

これにより緩やかに下っていくような進行、Ⅰへの解決が強くなりすぎないという特性を持つようになります。またⅡ-Ⅴ7ではなく、Ⅲ-Ⅴ7の流れをとりお決まり感を薄めています。このときのⅢmの機能は、人によります。Tと取る人もいますしDと取る人もいます。どちらも正解です。

ですが私はあくまでカデンツの流れを意識したいのでこの場合はあくまでDととり、擬似的なドミナントの連続ととるようにしています。

弱進行+まとめ

さて、ここまではあくまで基本的な流れでした。ほとんどの曲はここに示した3型で説明がつきます。

このカデンツの流れが読めれば、それだけでキーの判別などが出来るようになります。

さて最後は「弱進行」についてお話しておきます。

この3型に共通する点として「D>T」の流れ、ドミナントモーションが守られているという特徴があります。ですがこれはあくまで基本であり、昨今の音楽ではこれを合えて守らないからカッコイイという概念があります。

それが「弱進行」です。具体的には「D>SD」という流れをさします。

特にブルース・ロックなどではこれが当たり前です。Popsでも多用する人は多用します。

では最後に、実践的なコードワークをこの基本3型と弱進行を使ってやってみましょう。また変則ドミナントや借用和音/転回系も使ってしまいます。

まとめ音源

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はい、ちょっと窮屈になりましたが、上記すべて、それから弱進行を含んでおり、裏コードや借用和音を含むコード進行にしてみました。

お時間あれば、アナリーゼしてみてください。

この進行にはちょっと珍しい用法や、借用和音の応用的な使い方も盛り込まれています。さて・・・見破れますかな?

もし、ここどういうこと?という質問があればできればコメントでいただきたいです。メールの場合シェアできない部分もありますのでよろしくお願いします。