リハーモナイズを学ぶにあたり
リハーモナイズ(和声付け)とは、ある旋律に対して違うコードワーク(和声進行)を付けることで曲の雰囲気を変える技法になります。
これが高度に高められると、音楽のジャンル性を高めることができ、編曲の領域に至る場合も多いです。
そんなリハーモナイズですが、実は中核をなすものは難しくありません。
もちろんこれも技法に当たりますので、楽典の用語や理論を覚えておくと理解が早まります。
基本的に守られるべき項目
リハーモナイズを不自然な感じがしないよう構築するためには、大前提として「調性感の維持」が大切です。
メロディの調性を無視することなく、ある程度のシンプルな流れを理解したうえで、そこにさらに変化を加えていくという方法が好ましいといえます。
お題のメロディ
キーはCです。スケールノートのみのシンプルなメロディです。
ダイアトニックだけ、4小節×2のシンプルな伴奏をつけてみましょう。
お題のメロディ+基本伴奏
まぁ何のことはないですね。これを元にアレンジを進めてもそうおかしい響きにはならないでしょう。
なぜかと言うと、当然ですが、この伴奏はキーCを守り、基本的なカデンツ進行「Ⅰ-Ⅳ-Ⅱ-Ⅴ」を守っています。詳しいコードシンボルは下記を参考にしてください。
このように、リハーモナイズの基本の一つとしてメロディのキーを判断し、そのメロディに合った調性の響きを尊重する必要があります。
ですが、これはあくまで基本であり、お聞きのとおりちょっと寂しいですよね。
ではこれに「借用和音」など他の調の響きを、ダイアトニック上でももっと違う和音を選定することでどこまで聞こえ方が替わるのかを試してみましょう。
コードを置き換えたり、差し替えたりする際の注意点
まず始めに、この判断基準はジャンルによりかなり異なるということを覚えておきましょう。またその話は編曲の領域の話になりますので、ここでは割愛させていただきます。
ですので今日は私が考える、厳選した「ここだけで大きく変わる!」というポイントだけ濃縮してお贈りします。
注意しておきたい音程差
今日の一番のポイントです。覚えておくだけでも役に立つと思いますので、特に耳で覚えていただきたいです。
取り扱い要注意!もっと不協和な音程差「短9度」
はい、聞ける方は聞いてみていただけたでしょうか? これが1oct+半音の音程差「短9度」です。
この音源の音は「C3とC#4」ですが、この音程差はどこを基音としてもとても不協和です。JAZZなどの書籍においても「不協和な音程差であり、取り扱いが難しく唐突に使用すべきでない。」と言う位置づけになります。
Popsなどにおいてはこの音程差がなった時点で「失敗」ととらえられてしまうほど、キツイ音程差ですよね。
この音程差がヴォイシング内に内在すると、それだけでキツイ不協和なサウンドになります。ましてや、コードトーンとメロディでこの音程差が生じていたり、ベースラインとメロディラインがこの音程差を形成する場合はさらに強い不協和を生み出します。
意図しないときは、やはり避けるべき音程差であり、リハーモナイズを行うときに気をつけておきたい大事なポイントです。
コード第3音とぶつかる半音(アヴォイドノート)
ちょっと気持ち悪いですね。キーCですので、Cコードのうえで、Ⅳの音であるFが同時になっています。
何故、FはCメジャースケール上の音のはずなのに一緒になって気持ちが悪いのかというと、主和音(この場合Cコード)の第3音(3th)であるEの音と半音でぶつかってしまうからです。ここ大事です。
F△7上でFの音がなると、おなじくEとFが半音でぶつかるのにそこまで不協和ではないはずです。この3thとぶつかる半音というのがポイントです。
ご存知の方も多いと思いますが、コードの3thはコードの中でもっとも大切な音とされます。どのコードであれ、これをやると気持ち悪くなってしまうというのを覚えておきましょう。
また、ドミナント上の主音、キーCならば、G7上でCの音が同時になり続けると、導音であるBと半音でぶつかりこれも不協和となります。
同じスケール上にある音でも、「主和音上の下属音(Ⅳの音)」「ドミナント上の主音(Ⅰの音)」は不協和になりやすいポイントですので覚えておきましょう。
総括
はい。これがもっとも気をつけておきたいリハーモナイズ時のポイントでした。
以上を守っていれば、極端におかしな結果にはならないでしょう。
では今回のお題をちょっとかっこよくブラッシュアップして終わりにしたいと思います。
印象の違いを実感してみよう。
リハーモナイズ後
MIDIロール
はい、リハーモナイズを行いました。あまりクラシックよりになりすぎず、かつ進行的な若干の矛盾点を残しながらやってみましたが、最初のシンプルなものよりも大分複雑に聞こえるのではないかと思います。
興味があれば、アナリーゼしてみてください。
今回のメロディは細かく動き、なおかつ音程差がすぐ変わるいかにもテスト用のやりにくいメロディでしたが、それでも付け直し方はいろいろあります。
極論言えばもっともっとせせこましく変化させたり無理やりドラマテックな進行にも出来ますが、このメロディではそれら進行に耐えられないのがこうしてみるとよく分かります。
それはこのメロディが強拍を意識しすぎた重いメロディで、起伏が多く波のように動いています。
これでは複雑なコードワークを持ち出しても、メロディの情景がコードワークをかき消してしまう印象を受けます。
もちろん、理論上可能だからといって次々にコードを変えてしまうと、背景がめまぐるしく変わりすぎてあまり気持ちよいものではありません。
メロディ毎に合った進行、そして和声変化量(コード変化量)が大切だと思います。
是非、皆さんの曲のメロディが喜ぶバランスを見つけてあげてください。