その前に「奨学金を借りる?借りない?」の話
「音大卒です。首席卒でした!」なんていう昔取った杵柄を掲げていると生徒さんに「私も行った方がいいでしょうか?」とかよく聞かれます。
その時、私が決まって最初に聞くのが「奨学金借りなくてもいけそう?」という質問です。
まず講師は奨学金を借りたことがありません。お袋には感謝しかありません。ですが仮に奨学金を借りていたらと計算すると、確実に今の人生は無かったと思います。
しっかりとした奨学金は変動金利で比較的低年利のようですが、それでも利子付きの借金に違いはありません。
もし返済義務のある奨学金を借りて大学や専門学校へ行くのであれば、卒業後は企業への就職が前提です。なので芸術系にありがちな(私もそうでしたが)卒業後もバイトしながら芸術活動をする的なことは厳しいと考えましょう。
借金することなく、かつまだ若いのであれば私は音楽系大学や専門学校に行くことは大賛成です。というより目的もないまま進学するより有意義な時間になると私は考えています。
進学前に「学び」について考えておく事
私の高校生時代には、よく進路指導の先生が大学について「大学は自分で学ぶところだからなっ!」とか言ってたのを覚えています。正直当時は全然ピンときてませんでした。
ですが自分でやりたい事を見つけてみるとその意味が痛いほどよくわかるようになります。ちなみに教える側になるともっとよくわかります。
この「自分で学ぶ」という点が出来ないと、何もしないまま大学生活なり専門学校生活が終わります。ちなみに音楽系学校の場合、残酷なのは差が実力としてそのまま表に出ますので誤魔化しがききません。
やり方は簡単です。要は練習や勉強を他人ではなく自分のためにやればいいのです。自分で自分に何が足りないのか?など常に自分自身で考えたり研究することです。
そしてそこから生じる疑問や問題の解決に大学や専門学校という環境や、そこにいる先生や友達を言い方は悪いですがうまく利用していけばいいのです。
以前に「なれる前に努力すると失敗する。」という記事を書きましたが、音楽系学校は通うだけである程度「なれる」ことはできます。しかし残念ながらそれだけのために行くのは、時間とお金がもったいない場所でもあります。なので「なれ」の領域を突破するための努力までできて初めて音楽系学校は価値があると思ってください。
常に自分から学ぶという姿勢を忘れないように進学前から「音楽系にいくからには~」というような攻めの姿勢を取れるよう気を付けておきましょう。
将来を気にして学校を選ぶなら音楽はやめとけ
これもよく聞かれます。音楽の将来性やら仕事やら関連なのですが、今はコロナのせいで今後どうなるかもわからないという点を抜きにしても音楽は常に供給多可の業界だと思います。
音楽系なら大学だろうが専門学校だろうが将来性に大差なんてないと感じます。そして行くか行かないかで大きな差が生まれるとも考えにくいです。
猛烈に自己練習しつつ、個人で教えている講師に習っても十分技量は上達すると思いますし、音楽系の進学は選択肢の幅が通常の学校より狭いです。
もし将来の生活や人生を金銭面で考えるのであれば、音楽という選択肢は確率論でいえば完全に悪手です。これは歴史を見てもそうです。昔から食いやすかった商売ではありません。
完全に安心・安全な未来はないにしても、音楽より勝算の高い路線はいくらでもあります。ここでの判断が一生を左右するとは私は思いませんが、そう思い込んでしまうことは出来るので注意しましょう。
音楽を本気でやりこむ時間を確保するために
音楽系の学校を選ぶ場合、なんといっても最高のメリットは「音楽をやる」ということに集中しやすく、かつ音楽系の非日常的体験を多くできるという点です。
ストレートな表現ですが、お金と時間を多くとる分様々な体験ができます。中には不必要だと感じるような体験でも後に意外なほど役に立つこともあります。私もそういった意味では音大には感謝しています。
また社会的な常識というものに守られるというのも精神衛生上は良いモノだと思います。「音大生です。音楽勉強してます。」至極当然に聞こえるはずです。でも「バイトしながら音楽勉強しています。」だとやってること同じなのになぜか社会的評価が変わります。
実際におもいっきりどちらも体験した身としては、大義名分ありきで音楽できる時間がどれほど幸せだったかよくわかっているつもりです。
本気で音楽をやりたいなら音楽系学校は魅力的な選択肢であることは間違いありません。
最後は絶対に自分できめること
当たり前の話ではありますが、とにかく大切なのは自分で決めることです。
人のせいにできると、音楽は多分絶対に上手くいきません。皆さんも最後は自分で決断してください。
そうすればきっと大変な時もあるかもしれませんが楽しい毎日が待っていると思います。