生徒さんの質問率がとても高い質問です。
今日は「音量感」と「音圧感」について記事にまとめてみたいと思います。
まずこの二つの違いを明確にしておきたいと思います。
音量感
ここで言う「音量感」とは、「ステレオイメージ」と「各帯域の音量バランス」を足して2で割ったものと考えてください。RMSとほぼ同義ですが、RMSよりも感覚的なものになります。
また、この質感を最終的に決めるのはすべての帯域にかかる非常に薄い歪みの量だと私は考えています。THDなどもその一つだと考えてます。
ここで大切なのは、ステレオ表現をどこまで上手く使えるか?そしてフェーダーバランスで既にきれいな音像が生まれるようなトラック構成かどうか?という点が重要です。
最終的な定位と各トラックの抜き差しによるLRのバランスなども含めた対策が必要です。
これはそのトラックに何のエフェクトをかけるか?という前に音源としてその役割を果たすトラックがまずあるかどうか?という点が大事だということになります。
音圧感
特に大きい要因として、多くの著名なプラグインの価格がどんどん下がってきている点にあります。
最近、特にオンラインレッスンを受講していただく方のほとんどが、「Waves」の何らかのバンドルをお持ちだったりします。
音圧だけに限っていうなれば、正しいコンプレッションとマキジマイザーを使うだけで実現可能なので、一番の違いはやはり現場でも使われるプラグインもしくはアウトボードなどをどの程度お持ちか?という点が大前提としてあると思います。
トラックメイキングで気をつけるべきポイント
最も重要なのはトラックメイキングの段階です。Mixはあくまでトラックがありそれに行なう処理です。
つまり、いくら高品位なプラグインと正しい設定を行なってもあるべきトラックが無い場合はどうしようもありません。
音量感/音圧感 を出しやすいトラックメイキングのポイントをまとめておきたいと思います。
音量感を出すトラックメイクのコツ
たとえばピアノ弾き語りの曲など、ヴォーカルとピアノのみ。と言うような編成のトラックのように非常に少ないトラック数の曲の場合には「空間成分」を上手く使えるかどうか?にかかってきます。また完全にモノラルで収録する場合にはどのようなパンニングで音の中心をおくか?も非常に大切だと思います。
ステレオ録音された音像は、アンビエントマイク(オフマイク)との兼ね合いが空間成分の調整に一役かうと思います。しかしながらDAWで打ち込みベースで曲を作ることが多い方にとっては各ステレオ系の音源ソフトの設定できる幅がここでモノを言うところです。(ドラム音源やピアノ音源など)
空間成分ですが、ステレオイメージをコントロールする場合一番影響力があるのが、リバーブタイプとリバーブテイルですね。
たとえば、ホールサウンドかルームサウンドかでは全然ステレオ感が変わりまよね。今回はどういう空間でどの程度のステレオイメージが欲しいのかをトラックメイキングの段階から念頭においておくのはとても大切なことだと思います。
あとはアーリーリフレクション、いわゆる初期反射とそのディレイ成分をどうつけるかでも音像に影響を与えます。私はあまり奇抜に細かく出すことはしません。それをする場合は別でショートディレイなどをつけて対応します。そうすることで反射成分にも調整が細かくかけられるからです。
一部プラグインにはステレオ感そのものを調整するプラグインもありますが、私は極力使わないようにしています。
パンニングで分けた音達も、センドリターンの成分の配置次第で印象が換わります。私は空間成分は意図しない限りパンとほぼ同じ位置にそろえるか、深いホールサウンドの場合はワザとセンター中心に集めておくことで音の芯を出すようにして、あまり奇抜な配置にはしない方がまとまりが得やすく音像がぶれにくくなるとおもいます。
音圧感をだすトラックメイキングのコツ
音はとにかく低音が無いと響きません。
アナログベースでも、デジタルベースの音楽でもとにかく低音成分をしっかり持たせておくことが大切です。
低音は、削るのは比較的簡単ですが美味しいところだけを盛るというのは中々難しいので最初から抜き過ぎないようにするのがコツです。
逆に、低音成分が出にくい編成の音楽の場合は低音を維持しているトラックを慎重にMix処理する必要があります。(たとえばハープとかオルゴール曲とか)
またトラック数が少ない場合も低音は慎重に扱いましょう。削りすぎると全然音圧のないトラックになります。
アレンジ上低音楽器を足せない場合は、リズムを入れられるのであればそこで低音をできるだけ稼ぎましょう。
ソロ音源などでそもそもに低音成分がない場合はどうしようもないです。そういう響きの音源とおもって対処する必要があります。
Mixの時の注意点
Mixで音量感を意識するときのコツ
空間成分が深すぎると音自体の輪郭がぼやけてしまうためいくら音圧があっても音量が大きく聞こえません。
また、ダブラー効果などを多用するのも輪郭がボケる原因になります。
元々センターに原音があり、太くなっても大丈夫なヴォーカルやリード楽器以外のトラックは注意が必要です。
芯があって聞いていて気持ちの良い音というのは飾り過ぎないというのが大前提だと思います。
Mixで音圧感を意識するときのコツ
ヴォーカルなどはディエッシングもしっかりしておくことで聞こえがよくなりより音圧を稼ぐことが出来ます。
また根本として、トータルの音量差の推移が少しでも少なくなるよう各トラックのフェーダバランスとパンニングは調整しておく必要があります。
重ねてマスタートラックでのマルチバンド処理とトータルコンプ処理は音圧を求める場合必ず必要です。
THD目的で歪み系のテープや真空管シュミをさす場合は、打ち込み主体の音楽だとインサートからのアナログ成分が邪魔になります。
そういう場合には、個別のエフェクトでTHDを増やすのは私個人としてはやめた方がよいと思います。
また最終的なリニアEQの処理では私はローカットは最近入れません。
トラックミックスの段階で成分調整できるとマスタリングで非常に良い結果が得られるからです。
マスタリング時のポイント
マスタリングでは、空間を意識させる場合はMS処理を。音圧を意識する場合はエンハンシングを重視する方が上手くいく場合が多いです。
MS処理の弱点は、だいたい+3dbを越える調整を行なおうとするとやはり位相がズレが顕著になっていきます。それ以下の調整ですみかつ良い効果が得られるようなMixが大切です。
音圧ですが、最近では音圧がありすぎる曲は敬遠されている気がしなくもないですが気持ちよく上げる場合には、ここでエンハンシングを行なうのが効果的です。
エンハンシングとは私が勝手にそう読んでいるのですが、いわゆるエキサイター系の処理とEQ処理をまとめて行なうものをエンハンシングと呼んでいます。
基本的には、欲しい帯域の倍音感を増しておき、出すぎた部分をほんの少しEQで整えていくというやり方です。
最近ではMixで既に十分なTHDと適度なトータルコンプ感を上手く出しておく方がより自然でナチュラルに仕上がるので個人的にはその方を使いますが、マスタリングでもできないことはないのでギリギリまで詰める場合には覚えておいて損は無いと思います。
まとめ
この質問は非常に多いですが、どんな音源であるか?手元の使えるプラグインはなにか?(もしくはアウトボード)でその結果は大きく異なります。
大切なのは耳を鍛えておき、自分の求める音へのアプローチを出来るだけ多くテストしておく事です。
もう一つ大切な点として各プリセットの設定の意図しているところがわかるようになっておくと、新しく入れたプラグインの方向性などを理解しやすくなります。
買ったまま、一切触っていないものないでしょうか?
プチミニマリストとしては削減対象かどうか?も気になるところですが…検証は大切です。好みの音が見つかり始めるとやはり音の方向性に合わせたある程度のテンプレートは出来てきます。
また、自分で一貫して行う場合にはトラックメイキングの段階で既にミックスルーティングも同時に組んでいくことでプロジェクト自体が非常に洗練されてくると思います。
もし、各工程で気になるところがあれば是非レッスンをご検討ください。