【上級者向け】借用和音【理論と用法】

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借用和音を学習するために

今日は、作曲のクオリティを引き上げるもっとも簡単で効果的な手法「借用和音」についてまとめてみます。

借用和音とは、今いる調(キー)とは違う調(キー)の和音(コード)を一時的に借りてきて使用することで、曲更なる広がりを与える技法です。

似た技法に「転調」という技法があります。ですがこれは本来クラシック向けの解釈であり、POPSなどのジャンルにおいては「借用和音」として解釈するほうが良いというのが私の考え方です。

「転調」と「借用和音」の違いは人によって解釈が異なります、が私はそれを分けるのはただ単に「調変化の時間の長さの違い」だと考えます。

「転調」はある区間ずーっと違う調にいるという場合に使用し、1コード~1カデンツぐらいの規模で違う調の響きが感じられる場合はすべて「借用和音」として解釈すべきだと思います。

この借用和音を理解するためには、少なくとも楽典で「音程」「調性」「和音機能」「カデンツ」の理解が必要になります。

以前の旧記事「今日の作曲ネタ」で飛ばし飛ばしにやっていた「借用和音」を教訓にさらに解りやすく、解説してみたいと思います。

ドミナントの借用

借用和音の中でもっとも良く用いられるのが、他の調のドミナントを借りてくるという手法です。

セカンダリードミナント(ドッペルドミナント)とも言われ、その行為自体に名前がつくほど良く用いられます。

基本的な用法

理論的な解釈は簡単です。

ドミナントコード群は不安定なコードであり、トニック(場合によりサブドミナント)の機能に当てはまるコード群に解決(落ち着きたい。)という能力をもっていることはご存知かと思います。

これを別の視点から言い換えるのならば、ドミナントコード群にあてはまらいコード群はすべて「解決先のコードとしての能力を有している。」と言い換えられます。

つまり、どんな調・進行上にいようと、ある一部だけ切り取ればどこにでもドミナントモーションを形成可能ということになります。

実際どのような音の動きになるのかを見てみてください。

例:ハ長調(キー:C) 進行:C>F△7>G7>C 和音機能:T>SD>D>T
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この進行をピアノで演奏してみるとこちら。

非常にシンプルな、なんのひねりも無いC:でのカデンツの進行です。

たとえば、この進行内に存在する「F△7」は、キーCではSD(サブドミナント)となりますが、キーFの場合は当然T(トニック)ですよね。

ということは、この「F△7」へ向かうドミナントを「F△7」の前に入れてしまっても大丈夫だろう。というのがドミナントの借用です。

では実際にやってみましょう。Fをトニックとするならば、ドミナントは「C7」になりますよね。

例:ハ長調(キー:C) 進行:C>C7>F△7>G7>C 和音機能:T>D>SD(T)>D>T
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この進行をピアノで演奏してみるとこちら。

はい、このように借用することができました。C:にいながらにして一瞬F:のキーの味を出すことが出来ました。

これを利用すれば、C:上のコードに対し、様々なドミナントアプローチが可能だということがわかっていただけると思います。

偽終止(Ⅵ)であるAmに対してはE7をアプローチできますし、DmにはA7のアプローチができますよね?

当然これらドミナントコードをさらに裏コード(代理コード)に置き換えることでさらに複雑化させることも、もちろん可能です。

次はこの基本を元に応用を考えていきます。

応用的な用法

ドミナントも種類がありますよね。例えば代表的な変則ドミナントとして「dim(ディミニッシュ)」が上げられます。

dimは、和声学上、「根音(ルート)を省略した、短調のⅤ9」とされています。それゆえドミナントとして機能させることが出来ます。

コードシンボルで詳しく書けば、「Ⅴ7(♭9)omitRoot」=「dim(7)」ということになります。

Popsなどでのdimの用法は、「半音上のdimコードを挟んで滑らかに繋ぐ。」というようなある種パターン化した使い方が一般的です。

これを理論的に解釈すると、借用和音の応用だということがよく分かります。

例えば、C>Dm7>G7>CのDm7に対してドミナント(短調)を借用すると…。

C>A7♭9>Dm7>G7>Cということになります。

で、先ほどの説明したようにこの「A7♭9」の根音が消えると、構成音が「C#-E-G-B♭」とすべて短三度音程の和音(=dim(7))になります。

C>C#dim>Dm7>G7>Cとなり、CとDm7のつなぎとして「C#dim」をはさんで滑らかにつなぐということが出来ます。
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この進行をピアノで演奏してみるとこちら。



これらを踏まえ、借用和音たっぷりの進行を最後に一つ考えてみます。またすこし音楽的に聞こえるよにちょっぴり装飾も加えてみましょう。
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この進行をピアノで演奏してみるとこちら。

はい。すこし短いスパンでせせこましく和音が変化しますのですこし窮屈な感じがしてしまうと思いますし、ベタ打ちでちょっと抑揚が無いと思いますが、やろうと思えばもっと窮屈に・大胆に変化させることも借用和音を使えば簡単です。

MIDIロール小さくなりましたが、興味がある人は分析してみてくださいね。

このように情熱的とも、おしゃれとも感じるカッコいい進行になります。是非取り入れてみてください。

サブドミナントの借用

こんどは、サブドミナントの借用です。ドミナントとは異なり、非常に限定的な手法です。

サブドミナントマイナーという手法がほぼすべてと言っても過言ではないです。

この他にも一部解釈できる方法論などは存在しますが、現代の音楽シーンではほとんど使われません。

用法

こちらも用法は簡単です。

ハ長調(Cメジャー)であれば、ハ短調(Cマイナー)のサブドミナントを借りてきます。(同主短調からの借用/準固有和音とも呼ばれます。)

逆に短調から長調の和音を借りてくることは稀です。

この手法で最も多く見られるのが、Ⅳの和音の借用です。理由はごく自然であり、借りてきた後も強い変化をあまり感じさせずもとのキーになじみやすいという特性があるからだと考えられます。

ハ長調(キー:C)の場合であれば、F△7がFm7になりますね。それではそれを含む進行を考えて見ます。

例:ハ長調(キー:C) 進行:C>F△7>Fm7>Em7>E♭7>Dm7>G7onD>C 和音機能:T>SD>SD>T(D)>D>D>T
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この進行をピアノで演奏してみるとこちら。

はい。こんな感じですね。

やはり、F△7がFm7になったらなんとも締まるといいますか、一瞬の陰りが生じてせつなくもかんじますよね。

まとめ

リハーモナイズの最終到達点の一つでもある借用和音のなかでも今でも良く使われるものだけぎゅぎゅっと抜粋してみました。

今回はあくまでも理論的な用法を主体に話を進めてみました。

この技法の真価が発揮されるのは、リハーモナイズですので次はその始点からも斬ってみたいと思います。